企業研修の新メニューに
“創作ダンス”は
いかがですか?
1.はじめに(背景)
コミュニケーションに関する能力を求める社会的要請の高まりを受け、文部科学省が、2010年にスタートさせた新事業が「児童生徒のコミュニケーションの育成に資する芸術表現体験事業」(現在の事業名は「コミュニケーション能力向上事業」。以下、「新事業」という。)でした。その背景には、
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経済協力開発機構(OECD)では、子どもたちに必要な能力の一つとして「多様な社会グループ における人間関係形成能力」を挙げたこと
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諸外国では、クリエイティブな活動をする実践家やアーティストが学校でワークショップ型の授業を行い、子どもたちの創造性やコミュニケーション能力等を育む機会を儲けている事例が多く見られ、成果を上げている
等がありました。当時、創造性とコミュニケーション能力の育成に資する「創作ダンス」の再見・推進に携わっていたダンスカンパニー「んまつーポス」(代表:豊福彬文)も、2011年に、新事業に参画することができました。それから11年間、いくつもの団体が淘汰される中、毎年度この新事業に応募・受託し、県内外の学校で「んまつーポスの創作ダンス」を実施してきました。
2.実践研究
新事業により、“多様な社会グループにおける人間関係形成能力”を向上させた児童生徒がいる一方で、 その恩恵に与ることができずに社会人になってしまった元児童・生徒も少なくありません。さらに近年は、新たなイノベーションを起こすために、上司にも、丁寧なコミュニケーションを通じて、部下の潜在能力を見いだし、その能力が開花するようにサポートする力が求められるようになりました。 そこで、一般社団法人北上文化創造の協力の下、北上市の企業を対象に、中学生で「創作ダンス」を体験したことがある大人(その多くは女性)をはじめ、体験することができなかった大人(その多くは男性)に、「創作ダンス」を追体験してもらい、学校教育が育成しようとしている「自己を確立しつつ、他者を受容し、多様な価値観を持つ人々と共に思考し、協力・協働しながら課題を解決し、新たな価値を生み出しながら、社会に貢献することができる個人」について、共に考えながら、ビジネスに必要不可欠な「伝える力」「受け入れる力」「協働する力」の育成に資するワークショップを実践研究しました。さらに、研究の上位目標を、“「創作ダンス」が多様な価値観が存在する国内外の企業研修の必須メニューとなる”としました。
【実践1】(株)近藤設備 ※設備系の関係者なら誰もがその名を知っている企業
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対象:20代~50代の男女社員28名
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日時:6月17 日(金)10:00〜11:30
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会場:今秋オープン予定の新施設ザ・キャンパス(北上市と奥州市にまたがる丘陵地に在るキャンプ場)
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プログラム名:『だだだだ・だ』 90 分間で「踊って、創って、撮影して、編集して、鑑賞して、興奮して、解散する」をパッケージとした「んまつーポスの創作ダンス」
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企業が期待した効果:①社員同士のコミュニケーショ向上 ②新施設のPR
【実践2】(株)小田島組 ※近年急成長している企業。社員は平均年齢27歳。
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対象:新入社員24名(新卒22、中途2)、希望者4名
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日時:6月17 日(金)15:00〜16:30
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会場:O2(オーツー)/新社屋のイベント貸しスペース(地域の交流地点)
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プログラム名:(株)近藤設備と同じ
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企業が期待した効果:①新入社員研修の一環 ②映像作品を企業PR及び7月の経営企画発表会(全社員200人が集まる)で活用する。
3.結果及び今後の課題
結果に代えて、参加者及び企業研修担当者に実施したアンケート調査の回答(自由記述)を抜粋して以下に示します。※ ◯は参加者の回答、◎は研修担当者の回答
◯ 限られた時間の中で、意見を出し合い自分たちの正解を作り出して行くという活動は
なかなかできるものではない。結果が失敗だとしても、その失敗すら別の視点で見た
ら正解になるという考えは大事にしたいし、ダンスという普段やらない運動も、脳の
活性化につながる良い刺激となった。
◯ 同期の意外な一面も見られ、新しい人と関わってゼロから創造することがこんなに楽
しいと思いませんでした。体を動かしコミュニケーションをとることでさらに仲も深
まりました。
◯ 今後このようなワークショップがあればぜひ参加したいです。
◎ 新しい風を感じました。始まりは、重い表情のメンバーでしたが、皆、最後は爽やか
な表情になっていました。
◎ 通常の仕事上でも部下への指示が上手く伝わらないことが、度々あります。あの短時
間で指示したことを実行させることが出来ることが凄いと感じ、仕事にも取り入れら
れたらと思っています。
実施したパッケージの商品化のために、「料金20万円(旅費別途)でも実施したいで
すか」と質問したところ、どちらの企業の回答も「実施したい」でした。
今後の課題は、「創作ダンス」を企業研修×コミュニケーションのトレンド(検索ワードランキング1位)にすることです。そのために、地域の大学や企業・官公庁・公社・団体等の協力の下、多様な業界の企業研修モデル(適正な料金等)をデザインし、「見える化」した成果をSNS等で情報発信します。